リモートワークは、ここ数年、特にコロナ禍を機に多くの企業で導入が進んだ働き方です。しかし、大分県、熊本県を中心に総合建設業を行っている「高山組」では、働き方改革の推進が叫ばれる以前から、社員のライフスタイルに合わせてリモートワークを実施していました。
まだまだリモートワークの普及率が低いと言われる建設業での、リモートワークとは。実際に現在リモートで働いているという社員の白橋さんと、「高山組」の総務部長にお話を伺いました。
旦那さんの転勤を機にリモートワークへ
現在「高山組」でリモートワークをしているのは2名。そのうちの一人で、以前は本社勤務をしていたものの、現在は熊本県でリモートワークをしているのが、白橋さんです。
白橋さん:「高山組」には5年ほど前に経理として入社しました。2年ほど本社で勤務していましたが、主人が熊本に転勤になったため、退職をしようと相談したんです。その時に総務部長がリモートワークを提案してくださって。今は自宅でメールや電話でやりとりをしながら、内勤時と変わらない領収書をパソコンに入力する作業や請求書の発行、仕入れ伝票の作成などの業務を行っています。
総務部長:ご主人の転勤で辞めて、また熊本で仕事を探すという話を聞いたので、それならパソコンを会社が支給するから熊本で仕事するのはどうかな?と提案しました。お互いにそのほうが良いのではと。彼女の仕事ぶりは2年働いて見ていましたし、とても優秀な子ですので、リモートワークでも働いて欲しいと思ったんです。リモートワークでも、現場と密に連絡を取って進めてくれていますし、他の社員も白橋さんは熊本でリモートだからというのを理解して対応しているので、滞りなく業務ができています。
システムがしっかりと構築されているため、過去にトラブルになったことは一度もなく、白橋さんが本社に来る機会は年に2〜3回ほど。それも仕事納めの日や全員で飲み会をするときなど、業務以外がほとんどなのだそうです。
実際にリモートワークをすることで生活はどう変わったのでしょうか。
白橋さん:子育ての時間がもっと効率的に割けるようになったのは良かったなと思います。子どもが学校から帰った時に迎えてあげることができますし、ちょうどリモートワークを始めた時期がコロナ禍だったので、学校が急に休みになった時でも慌てることなく、仕事ができました。
現金を扱ったり、押印が必要な書類を扱う業務などもあり、事務職でも全員が全員、白橋さんのようにリモートワークを選択することができるわけではありませんが、勤務時間や休日なども社員の希望を優先し、多様な働き方を実現しています。
社員一人ひとりが最適な働き方を選択
総務部長:30年ほど前から「高山組」では、働き方について本人の希望を優先していました。出勤時間を8時半ではなく9時にしたいとか、退勤時間は15時までにしていたけど、子どもが成長したから17時まで働きたいとか。自分が子育てをしながら働くのが大変だった経験があるので、私たちにとっては社員さんに家族に合った働き方を選択してもらうというのは、すごく当たり前のことでしたね。子育てに限らず、2023年に入社する社員のひとりは将来「カフェを経営したい」という夢を持っているので、仕事終わりや休日にカフェで副業をすることもOKとしています。
白橋さん:私は面接の時に平日火曜から金曜の9時から16時までの勤務で希望を伝えました。すぐに「いいよ」と言ってくださいましたし、融通をきいていただけるのがとてもありがたいです。
総務部長:社員が結婚を機に退職をするということは多いですが、結婚して子供が産まれても、辞めるという決断をしないでいいように、それぞれの希望は優先してあげたいと思っています。以前、育休後に社員さんが戻ってきた際に、社内にベビーベットを置いて、お手伝いさんを雇って、みんなであやしたりということもありましたよ。
入社してくれた社員の働き方についてフレキシブルに対応したいと話してくれた総務部長。
今後はさらに妊娠、出産へのフォローも充実させたいと言います。
総務部長:竹田市は少子高齢化が課題となっています。もし社員の子で不妊治療を受けたいという方がいたら、女性だけでなく男性にも積極的に支援してあげられる環境を整えたいと思っています。
ワークとライフが融合した時代において、「会社ではなく家族のことを主体にして考えて、空いた時間に仕事をする感覚で良い」と、家庭と仕事の両立や、それぞれにとって最適な働き方、生き方を率先して支援する「高山組」。
建設業と聞くと、男性の職場のイメージがまだまだ根強くありますが、「高山組」は現場仕事に置いてもDX化によって女性も働きやすい体制にシフトしていくそうで、妊娠に出産、育児に将来の夢まで、個々の人生における「価値観」を大事にする、先進的な職場となっていました。