屋上にテントを張って宿泊できるようにしたり、夕食のサブスクリプションサービスを始めたり。竹田市の城下町に意表を突く発想とアイデアで注目を集めるユニークなホテルがあります。

竹田市で一番歴史の古いビジネスホテル、「トラベルイン吉富」です。

「トラベルイン吉富」は1919年、製材所として創業し、旅館業へ業態転換。1982年に竹田市初のビジネスホテルとして誕生しました。

2019年には創業100年を迎え、長寿企業の仲間入りを果たしたのを機に、新たなステージへと歩みはじめたそうです。

その事業概要について若女将の井上真由子さんに伺いました。

事業継承を機に、ビジネスホテルから山遊びが大好きになる宿へ

「創業100年の節目を機に、『吉富』を父母から、私たち夫婦へ事業継承をすることになりました。父がビジネスホテルで事業を展開したように、私たちも何かできないかと考えた際、山というキーワードが浮かんだのです。父も50年山登りを続けており、主人も小さい頃から登山に出かけていました。また、竹田市は久住山、阿蘇山、祖母山の3つの百名山の中心に位置します。そこに私たちのホテルがあることから、山宿にしようと考えました。」

事業継承を機に動き出した「山宿」化のプロジェクト。

井上さんは「山宿」を体現するために、ホテル全体を山に見立てた取り組みを始めました。

山頂である屋上には、山宿と知ってもらうためのシンボルとしてテント泊をスタートし、麓である1階はコミュニティの場として、ホテルに隣接する食事処「庄屋」にて平日日替わりの夕飯がいただけるサブスクリプションプランをスタート。単身赴任の方や高齢者のひとり暮らしの方をターゲットに、食事を配達するのではなく、訪れてもらってコミュニケーションを楽しむ場を作りました。

さらにホテルの2階には「竹田の町に泊まっていただいたお客さまに、竹田の楽しさを知って、ぐるりと巡って欲しい」という想いで、エコミュージアムを開設しています。

「経営理念は、『つなぐ』です。地域の人と、外から来た人たちを繋ぐ、また地域資源と人とを繋ぐ結節部としての役割を果たしたいと思っています。」

元々登山客の利用も多かったことから、山宿化の反響は上々。

今後は山宿の全国展開も視野に入れていると井上さんは話します。

「全国には多くの名峰があります。その名だたる山々の近くで宿を運営して、『山の近くには吉富があるね』と言われるのが夢です。その第一歩として、2022年の1月から、まずは竹田市の城下町で一棟貸しゲストハウスの運営を始めました。」

古民家を改修し、山小屋風に仕上げたというゲストハウス。

山頂という意味の「クレスト」と名付け、登山客の新しい受け入れ先となっているそうです。

隙間時間＆短期もOK！ おもてなし好きのスタッフ求む。

新しい宿の運営をするために、全国展開を見据え、「トラベルイン吉富」ではスタッフを募集しています。

「ホテルは24時間仕事があるので、2〜3時間といった短時間でも勤務できる方を探しています。山宿なので、登山のために数日宿泊していて、客室清掃や朝の食器洗い、配膳などピンポイントの仕事でお小遣いを稼ぎたいという方でも大歓迎です。」

井上さんのご主人は登山ガイドもしており、その補助をしてもらう仕事や、山宿としての魅力の発信に加え、竹田市の町の魅力を発信してくれる方も募集しているそうです。

現在若女将の右腕として働いている森洋子さんに仕事について教えていただきました。

「宿屋の仕事はフロント業務をしたり、清掃をしたり、食事の配膳をしたり。業務内容が多く大変そうに感じますが、逆にいろんな仕事ができることが私自身の気分転換にもなっています。一つのことをずっと集中して続けるのが難しい方には最適な仕事だと思いますし、もし『私は清掃が得意』『情報発信が得意』という方がいらっしゃれば、その分野を中心に仕事を組むこともできますので、まずはご連絡いただきたいですね。」

マルチタスクを楽しめる方、また集中して一つの業務に取り組みたい方には、その業務だけを担当して働いてもらう短時間のアルバイトなど、働き方は多様。

数日間だけの短期バイトもできるので、ワーケーションの隙間時間にお小遣い稼ぎをしてみるのも良いかもしれません。

​​最後に、2022年の3月、完全に事業を受け継いで女将さんになられる井上さんに、これから取り組みたいことや目標を伺いました。

「私たち吉富は100周年を迎え事業継承致します。目的は100年後も事業が継続し、子ども達の笑顔が竹田にあふれる事です。

その為、今やりたい目標が２つあります。１つめは「町歩きガイドの勉強」です。今後、町歩きツアーを企画して食と泊を通してのおもてなしを充実させる事。２つめは、個人的でもあるのですが「竹田のおかあさん」と呼ばれるようになりたいです。子どもたちが、竹田で楽しかったと思い出に残るイベントや取り組みを企画したいですね。」

全国展開をはじめ、地域でのイベントやおもてなしの充実化を目指したいと話してくれた井上さん。新生「トラベルイン吉富」の事業を共に盛り立て、サポートしてくれる仲間を探しています。